2010年7月31日土曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<14>


●ひずみ その1

今から思うに、K先生やこの組織に対する忠誠心も強いだけに、それぞれメンバーの功名心も強かったのだろう。

その後、嫉妬やねたみも生まれ始めた。
ただこの段階では表面化していなかった。

それらを表面化させるきっかけとなったのが、メンバーのまとめ役となるはずだった私である。

夏の暑い日差しとまとわりつくような湿気を含んだ東京の午後、あるホテルの会議室。

その日はパートナー会議とあわせて、Y国立大学のH助教授を招いてのカウンセラー養成講座が行われていた。

1日目はロールプレイングを取り入れた質問力のトレーニング。

2日目は復習と解説、質疑応答だった。

特にこの質疑応答の時間はいつも熱を帯びる。
経営者の心理から組織の心理まで、家族の問題と仕事や社会生活の関連性、後継者の問題など幅広く、問題の原因分析と解決策を答えてくれるからだ。

この日は特にK氏が熱心だった。
電話コンサルティングに寄せられた経営者の悩みについて熱心に尋ねていた。



「えっ、うつ病はうつるんですか?」


「ははは、オヤジギャグです。
 しかしうつは一人発症すると他の人も発症することがあります。
 なぜならうつは関係性の病気だからです」


「関係性の病気ですか?」


「そうです。人間関係が大きく関与します。
 うつ病は家族の支援の仕方で大きく改善しますし、
 反対に職場の人間関係や環境が変わらないと
 次々とうつになる人が出てきます」


「つまり、うつ病の人を辞めさせても、
 またうつ病の人が出てくると言うことですね」


「そうです。ですから腐ったリンゴを取り除くように、
 その本人を辞めさせても何の解決にもなりません。
 職場にうつ病の人が出ればそれをサインと捉えて、
 その人のサポートを含め職場の環境改善に取り組む事が重要です。
 そうしないとその組織は発展しません。
 ほんとうはまず経営者トップが自ら変わらなければならないんです」


「そうだったんですね」


何か思い当たることがあったのかK氏はしきりと感心していた。
それから休憩時間後、急にK氏が言い出した。

「H先生、すばらしいアイデアがあるんですが、
 時間を頂いて発表してもいいですか」


「ええ、いいですよ。どうぞ」


「私たちの会員さんもそうですが、
 企業が成長すればするほど、
 経営者自身やその組織に色んなトラブルやひずみが出てきます。

 これからはますますH先生のような専門家や
 カウンセラーが求められるでしょう。

 そこで経営者向けの特別のメンタルケアが受けられる会員制度を作ります。
 その入会金の中に寄付金も含めるのです。
 その寄付金でH先生のカウンセラー養成や
 子供のためのボランティア活動を支援するんです。

 その会社作ってこのパートナーの共同事業として
 運営するというのはどうでしょう」


 「それはおもしろいですね」

 「ぜひやりましょう」


その場にいた全員が賛成をした。私一人を除いては。


「社長はSさんにやってもらったらどうでしょう」

「いいですねー」と皆が言った。

Sさんどうですか」とK氏。


長い沈黙。

そしてやっとの思いでこういった。


「わかりました。しかしちょっと考えさせて下さい」


「じゃあ詳細は次のパートナー会議で話し合いましょう」


この時私に何が起こっていたのか。

なぜこのような態度を取ったのか。

このK氏のアイデアを聞いたとき最初はあっけにとられた。

そしてそれが深い失望感に変わり、
社長をやってくださいと言われた瞬間には喜びも入り交じり、
気持ちが拮抗して固まってしまったのだ。

なぜならこれは私のアイデアだったのだ。

パートナーがお互いの事業計画がダブらないように
昨年末に提出した私の未来計画そのままだったからだ。


帰りの飛行機の中、私は深く沈んだ。

『尊敬するK先生がこんな事をやるなんて』

『いや、たまたま偶然だったのだ』そう考える自分もいた。

実は後からわかったのだが、K氏は人のアイデアをどこかで
自分のアイデアと思いこんでしまう癖があった。

この後も同じようなことが二度も起こった。

あまりにも多くの情報に触れすぎるのだろう。
自分のアイデアと人のアイデアを混同してしまうようである。

また、この事件から数ヶ月後にも私の恩師でもある
竹田陽一先生が新刊で自分のアイデアを盗作したと
K氏が騒いだこともあった。

そのアイデアは竹田先生が何年も前に著書で発表しており、
その証拠を突きつけられ何も言えなくなったのだが、
以前竹田先生の著書をどこかで読んでいて、
何かのきっかけで思い出し自分のアイデアと
思いこんでしまったと推測される。

『何にせよ社長をやらせてくれると言ったんだし、
 私の未来計画がこんなにもはやく実現するんだ』

『これは喜ぶべきだ』と自分に言い聞かせた。

次の日、K氏に電話をいれた。

「あのような態度をとってすみませんでした。
 私も同じ事を考えていたので、
 あまりにもびっくりして固まってしまったんです。
 ぜひ社長をやらせてください」

と結局私がお詫びをするという形でへりくだったのである。

「ただし、パートナー全員ではなく、
 誰と一緒にやるのか人選は私に任せてくれませんか」

「それは構いませんよ。
 取りあえず事業計画書の原案を作ってください。
 でき次第、登記を直ぐに行いますから」

とさすがに行動力のある人である。

<続く>


2010年7月28日水曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<13>


●コラボレーション成功の秘訣


その後も勢いはとどまることはなく、パートナーたちはいろんなユニークなイベント、コンテンツの開発を行っていった。

K先生の提供するコンテンツだけでは飽き足らなかったのだ。

いやもともと枠には収まりきらない連中の集まりである。
自分たちの中のユニークさを発揮したくてたまらない衝動がふつふつと湧き出し、漏れ出していたのだろう。

新しいセミナーの開発
共同のニュースレターの発行
パートナーのメルマガの発行
共同オンデマンド出版
共同のオーディオ教材
起業家のための大学構想

・・・などなど。
もちろん、没になった企画もあるが、次から次へと卒業して1年もしないうちに、いろんな企画が形になっていった。

まさに「守・破・離」の「破」ので時期であった。

しかし、全く仲よくやっていったのかというとそんなこともなかった。
常に議論がさかんに行われたし、不満も渦巻くこともあった。

それでもうまくやって行っていたのはやはり、価値観やミッション、ビジョンが共通していたからだ。

実はこの1年後にこのパートナー制度は解散となる。
これはK氏の個人的な理由から、会員組織を休止してしまったため、解散となるのである。


しかし、いくつかの理由で亀裂が入り始めていたのも確かである。

それは、価値観を共有できない新メンバーが途中から入って来た時から始まった。

そして私が調整役を下りたことにも原因がある。
私が他の新規事業に没頭するために、またロイヤリティを受け取ることに、抵抗感が生まれ始めたからだ。その理由はまたあらためてお話しするとして・・


この時期、いくつかのコラボレーションを行うにあたって、成功する秘訣は次の3つが重要であることが身にしみてわかった。

1.価値観が同じメンバーであること
2.役割分担を明確にしてからスタートすること
3.役割による報酬を明確にしてからスタートすること


この3つについて、参加者全員が事前に十分納得できていなければ、後々トラブルとなる。その時は他のメンバーを探すか、企画そのものを一時中止することさえも大切である。

逆にこの3つが十分納得できていたときにはプロジェクトは加速度をつけて進むだけでなく、より価値の高いものへと変化を遂げて行った。

2010年7月26日月曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<12>


●どのようにチームビルディングしたのか?

4月に始まった月一回の半年間の講座も終わり、全員無事卒業となった。
ただし、今後年1回、パートナーコンサルタントとしてふさわしいかどうか、顧客調査などによる査定を行うという、条件付きである。

それぐらい、意識とクオリティの高さを要求した。
単なるフランチャイズ制度ではなかったからである。

メンバーの一人でも顧客からの評判が悪いと、全メンバーの信頼も下がってしまう。
以前にもお話ししたように、K氏は「コンテンツの価値を10倍にする」という意識が常にあったということからも、このあたりの厳しさはお分かりいただけると思う。


「しかし、あれだけの個性あるメンバーをよく一つにできたものだね」とよく言われた。

そこで、どのようにチームビルディングしながら、メンバーの意識とクオリティを高めて行ったのか?

その秘密をご紹介しよう。


チームビルディングにおいては「連帯感」と「
公平感」が重要であると私は思っている。



そしてより大切なのが「公平感」である。
その意味は二つある。

一つ目は、平等に分け与えるという意味ではなく、チャンスは平等だが、実力のある人、努力している人にはそれなりの報酬や褒賞が必要なのである。

たとえば、マーケティングのセミナーを行うとする。
全国各地でやったとしても、参加者の6割以上は東京会場に集中する。
だから、誰もが東京でセミナーを行いたい。

それをもし、平等に輪番制でやれば、実力のある人、努力している人のモティベーションが下がってしまうのである。
それでは、全体のレベルも向上しないし、まして顧客視点で見れば、大変失礼なことである。

メンバーのモティベーションを維持しながら、自分の実力を客観的に見られるように、気付かせていかなければならない。

また競争意識を持たせながら、「連帯感」も創出しなければならないのである。


「公平感」の意味の二つ目は、「あなたのことを大切に思っていますよ」と感じさせるような、メッセージを常に発しておくことが重要だ。

努力や実力によって報酬や褒賞の差はあるが、一人の人間としての存在をしっかり認めているという「公平感」が重要なのだ。


ではそれをどのように行っていたのか?
実は、やったことは、次のたったの3つの事である。


まずは個人レベルでのサポート。
これは電話コーチングという形で週1
回行った。

また電話が苦手な人に対しては、メーリングリストを通してのコミュニケーションをきめ細かく行った。

多いときには1日30通以上のやり取りが行われ、メールの返信だけで1日に8時間以上時間がかかることもしばしばあった。
それぐらいに丁寧に行っていった。

なぜそこまで時間をかけるのかと思われるだろうが、このような、雇用関係がなく、利害関係が発生する組織では、そこまで丁寧にコミュニケーションを取らないと、必ず後でトラブルが発生する。

「私のことを大切に扱ってくれない」と誰かが思うと、そこで心理ゲームが発生し、他のメンバーを巻き込みながら、違った形で不満が噴出していくのである。

次に月一回の電話会議。
これはK氏がメンバーの質問に答えたり、最新のトピックを伝えた。
これは養成講座終了後、半年間のサポートとして行われた。
もちろんサポートし、レベルアップを図る効果もあったがそれ以上にK氏が「常にあなた方のことを大切にしている」というメッセージにもなった。

そして年2回の合宿会議。
合宿の効果は先述したとおりだ。
合宿によってより深い連帯感を高めながらビジョンミーティングを行うのである。

お互いがこれから先、どんなビジョンでどんな計画を持っているのか?
それを発表してもらい、同じような計画であればコラボレーションできるところはないか?
競業するところはどのように調整するのか?
そしてパートナー全体として何を目指し、何を行っていくのか?
そういったことを徹底的に話し合うのである。


夢だけでは食ってはいけない。

しかし夢がなければ、人は本来持っている力を発揮しない。


ミッションやビジョンがあってこそ、仕事に価値が付加され、仕事に大きな感動が生まれるからだ。

やはり、バランスが重要なのである。




2010年7月23日金曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<11>


●成長をブーストさせた秘密

以前にも紹介したように、このパートナーコンサルタントの面々は非常に個性的であり、またそれぞれユニークな経歴を持ち、型破りな人生を送ってきた。

それだけに当然、貪欲であり、成長も早い。さらに気の早い連中もいた。

養成講座が始まって一カ月もしないうちにオンデマンド出版のコンテンツを作り上げ、それを数億円で買わせてほしいと、大手企業からオファーをもらっている者。

セミナーを自分自身で企画し、新聞広告などを使ってすでに集客し始める者もいた。

早く言えばフライングである。

それをK氏は諌めるどころか、なんと奨励をした。
そして、この気の早い連中の強い要望もあって、養成講座がスタートして3カ月目には、卒業式を迎えずにセミナー活動やコンサルティング活動のゴーサインを出したのである。
ただし、1年後には認定を改めて行うという条件付きで。

しかし、コンサルティングという仕事を経験しているのは数人であり、ましてセミナー講師としての経験を積んでいるのは1人だけであった。

そこで、生みだしたのが、セミナーやコンサルティングの内容によって、その時々、コンビやチームを組むという手法である。

まず、モデルとして私が九州チームというのを作り、九州でセミナーやコンサルティングを開始したのを皮切りに、各地でチームでのコンサルティング活動が立ち上がった。

・理論型(管理型)と直感型(起業型)の凸凹コンビ
・おふざけが大好きなエンターテイメントコンビ
20代で経営的才能を発揮していた秀才コンビ
・会計業を中心としたチーム
・女性が大好な夜の帝王チーム
・同じく女性が好きでもハンティング型チーム
・あくまでも自分のコンサルティングスタイルを確立しようとするローンウルフ
・・・など。

当然コンビを組めば取り分は半分。
チームで人数が増えるほど取り分は減っていく。

だから早く一人で主催できるように、みんな真剣に相手から学ぶ。
自分の良いところはどこか、相手の良いところをどう取り入れるべきかを見極め、修練を積んでいく。

そして、1年もせずにほとんどが独り立ちしていった。

まあ、とんでもないメンバーだったからこそ、これだけの早さで成長をして行ったと、当時は私も思った。

しかし、後で知ったことだが、多くのメンバーが、私の作ったマニュアルを赤線だらけにし、K氏のセミナービデオは擦り切れるくらい視聴し、自分で何度もリハーサルを行っていたのだ。

こういう私もマニュアルを作るためにK氏のセミナービデオは20回以上は見たし、その後も自分のものにするためには30回以上は視聴した。

究極の成長モデルは「守・破・離」

そして「守」がなければ次のステップはない。

「守」とは、やはり「量稽古」そして「実践、実践、実践」なのである。


2010年7月22日木曜日


●養成講座でどんな研修が行われたのか


実際、このコンサル養成講座ではどのような講座で何が行われたか。
あなたも興味深いことと思う。


まず、経営コンサルタントに必要な基礎的な知識は無視した。
そんなものは自分でいくらでも勉強できるし、MBAで習うようなことはほとんど実践では役に立たない。

まして私たちがクライアント対象とするのは中小企業。従業員数万人という企業をモデルとした戦略が使えるわけがない。というのが、K氏と私の共通認識だったからだ。


カリキュラム構成とマニュアルの作成は私が行なった。

事前にK氏との打ち合わせで、カリキュラム構成の見直しが何回か行われ、スケジュール調整もした。その事前準備にも時間をかけた。

しかし、残念ながら、この通りに行われることはまずなかった。


養成講座の第1回目の合宿。
ここで多くの時間を割いたのはビジネスモデル構築だった。
しかし・・

「カリキュラムにはいろいろ書かれていますが、今回はビジネスモデル構築のポイントだけを解説しておきます。他の項目は解説しません。Sさんのマニュアルが良くできているのでこれと、私のセミナー収録ビデオを参考に自分で勉強してください。」

と最初から釘をさしておく。

もちろん、打ち合わせなしのいきなり発言。

えっ、聞いてないよと内心訴える私。

聞いてないだけならいいが、今後のサポートのプレッシャーが嫌でものしかかるのである。


その後の半年間の養成講座もすべてこの調子だった。

養成講座が始まっていきなり「Sさん今日のテーマは何でしたか?」

「今回は売れる本の書き方とオンデマンド出版ということで前回変更しましたが」

「う~ん、それは先月のセミナービデオを見てもらえればいいし、電話会議でフォローできるので、今回はちょっと面白い情報があるんです。それをシェアしたいので、変更しましょう」


彼はハーバード・ビジネス・スクールより評価の高い、全米No.1のウォートン・スクールのMBA保持者である。

かなりの論理的思考の持ち主であるはずなのに、これだけスケジュールを無視するのかと思ったほど見事に期待が裏切られるのである。
ほとんどがインプロビゼーション(即興)なのだ。


しかしこれが彼のすごいところだと今では思う。

K氏がその時、その時に、重要と思う最新の情報をシェアしようとしてくれていたし、今何を実践すれば、パートナーコンサルタントの役に立ち、またクライアントのためになるのか、その情報を提供してくれた。


そして3回目から日数を倍にして追加されたのが、組織心理とコミュニケーション心理のケーススタディとカウンセリング・スキルトレーニングであった。

コンサルタントには、マーケティングの顧客心理を知るだけでなく、クライアントとその組織の心理を知ることに「必要」を通り越して、「強い欲求」がある。

それは、事業が思うようにうまく伸びて行かない本当の原因は内部に潜んでいることを、全員が体験を持って気づいていたからである。


2010年7月21日水曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<10>


●なぜブレイクしたのか? その2

では、究極の顧客戦略「信者化」の仕掛けの二つ目は何だったのか?

それは「自然発生的なコミュニティの仕掛け」にあった。


信者化とは顧客を熱狂的なファン、エンスージアスト、ティフォージ、フリーク、に育てて行き、まるで伝道者のように、口コミを広めて行ってくれる人たちを作りだすことである。

そして顧客同士が仲間意識、連帯感を感じ合えるコミュニティの存在が、顧客の信者化には絶対必要である。


前回お伝えした、イベントもそうだし、紙上であればニュースレターであり、ネット上であれば掲示板、SNSTwitter、などである。

これらはただコミュニティを作ればいいのではなく、その中でどう仕掛けていくかが重要なのだ。


では自然発生的なコミュニティがどうやって出来て行ったのだろうか?

それは「合宿形式のセミナー」を増やすことにあった。

あなたも経験があるはずである。

たとえば修学旅行などで、それ以前はそんなに仲が良かったわけでもない友達でも、夜を明かして話し合った友達は深い友人関係となっていく。
寝食を共にすると、大きな連帯感が生まれるのである。


それにK氏が気づいたきっかけは、K氏の主宰する会員組織がブレイクする2年ほど前に、K2コンビで始めた「グループコンサルティング制度」であった。

グループコンサルティング制度とは、クライアント数十社を集め、グループワーク形式で6ヶ月間コンサルティングしていく試みだ。
この最終回に、K´氏の提案でオプションとして合宿セミナーが行われた。

それが最高に盛り上がり、この6ヶ月間、同じ苦労をしてきた仲間という連帯感を高め、二次会ではカラオケで裸踊りをする男たちまで現れたほどである。(恥ずかしながら私もその一人だが…)

そしてその合宿に参加したメンバーが、その後お互いに連絡を取り合いながら情報交換し、各地で自主勉強会を開催するようになったのだ。

このようにグループコンサルティング制度そのものは大好評だった。
しかし、かなりの時間と労力を要するのでK氏は禁じ手にしてしまったが、この合宿形式のセミナーの効果を知ったK氏はその後、合宿セミナーを度々に行うようになったのである。

そうするとやはり、自主勉強会が各地に生まれて行くのである。
顧客が自ら次の顧客を開拓し、自主勉強会に動員し、K氏の本を自腹で買って配本してくれる。そしてその自主勉強会に新しく参加した人々が、K氏の会員となっていくのである。

こうやって、無償のセールスマン、つまり熱烈な信者がどんどん生まれて行ったのであった。



2010年7月14日水曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<9>



●なぜブレイクしたのか? その1

さて、話を1年ほど前に戻そう。

K氏の秘書は当時、銀行へ記帳に行くのが毎日楽しくてたまらなかったそうである。

機械に通帳を挿入すると「ジー、ジー・・」と入金記載が1時間以上も止まらなかったそうだ。それぐらい入会者が増え続け、通帳のゼロの数が増えていったのだ。

「後ろに並んでいる他のお客さんに申し訳ないと思いながらも、今日はどれだけ長く時間がかかるかが楽しみで・・並んでいる人が待ち切れずに、窓口に行ってしまうことが誇らしかったんです」と話してくれた。

では、このK氏の会員制組織がなぜ、大ブレイクしたのか?
しかもパートナーのコンサルタントを必要とするまで・・。


要因は複数あり、それらは相乗的に効果を発揮したと言えるだろう。

もちろんK氏のユニークな発想と才能もある。
時代の要求にマッチした、ノウハウの目新しさもある。
また、顧客感情に焦点を当てたマーケティングを自ら実践したことも重要だ。

さらに彼を世に知らしめた2冊目の著書は、当時ビジネス書では異例だった。
ビジネス書では敬遠された色遣いと目を引くタイトル、そして語りかけるような口調は、中小企業の経営者や起業家に親近感を与えて取りこんだ。

しかし、それを相乗的にブレイクさせたのは、「信者化」という究極の顧客戦略だ。
これは当時K氏が「K2コンビ」として盟友関係を組んでいた、もう一人のK´氏の影の功績といってもいいだろう。

その仕掛けの最大要因が二つあった。

一つは年間表彰制度である。

年間最優秀実践者を表彰するイベントを行うことが発表されると、会員は相談することよりも、実践結果を競って報告することに夢中になっていった。

なぜなら優秀な事例はニュースレターで紹介され、ポイントが与えられる。
そのポイントによって、六本木のライブハウスを借り切り、優秀会員だけが集まるパーティーの会場で表彰されるのである。

しかもイベントコンサルタントもやっていたK´氏だけにいろんな演出を凝らし、それは経営者の集まりとはとても思えなかった。まさにロックのライブコンサートのように参加者の気分をハイにした。

その様子がまたニュースレターでいかにも感動的に紹介され、「来年こそは」と、また会員が実践結果を競って報告してくる。ニュースレターの内容もどんどん充実していった。

そうするとコンサルタントが尻叩きをせずとも、黙っておいても喜んで会員は走ってくれるのである。また心理的に自己説得効果も起きるので、知人にこの会を奨めたくなるのである。

コンサル業界やコーチング業界では、クライアントの行動を促すことが非常に重要である。
なぜなら、クライアントが行動し、実践してくれなければ、成果が出ないからだ。

成果が出なければ自分の実績にもつながらないし、顧客満足も得られないので紹介も起こらない。
これを業界では「尻叩き」と呼んでいる。

それぐらい、コンサルタントにとって、いかにクライアントを行動させるかが生命線なのだ。


2010年7月13日火曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<8>


●ゆかいな仲間たちの顔ぶれ

パートナー制度に集まったのは本当にユニークな面々だ。

ある有名業務ソフト販売で全国ナンバーワンの代理店を作った者。
超一流大学から一流大企業というエリートコースにありながら、泥臭いリフォーム業として起業した者。
刑事からなぜか会計事務所に転職し、その後に独立した者。
学生時代に起業し100億円企業を作りながら、成熟期と見るなり経営権を数億円で売った者。
元暴走族ナンバー2から、なんと銀行に就職し、会計事務所に転職した者。
親の借金1億円を税理士として10年で返済しきった者。
同じく親兄弟の借金1億円をわずか数年で返済した建築家。
まるで通販のように毎年100件以上顧問先を開拓していた税理士。
などなど。

それぞれこのような、ユニークな経歴があると知って、パートナーとして選考したわけではない。それなのにこの多様ぶりには、私もぶっ飛んだ。

それだけに性格も多様だ。

一緒に歩いていても自分が興味あるものを見つけるといつの間にか消えてしまう者。
まさに体育会系で仁義に厚い者。
まるでジキルとハイドのように昼の顔はまじめ一筋だが夜になると誰にもわからないように目をぎらつかせネオン街に消えていく者などなど。

だから一緒に行動すると、もう大変であった。

たとえば、温泉合宿などをやると、宿に着きまずはミーティングと言っていても、温泉ならまずは風呂だろうと、荷物を投げ出してさっさと風呂に入ってしまう連中。
それよりも部屋割はどうなっているのか、スケジュールはどうなっているのか、議題は何なのかなどにこだわり、詳細が紙に書かれていないと気が済まない者。

また、深夜2時ごろムクッと起きだして、真っ暗の中、いきなりパソコンをはじめる者。
彼にとっては寝ている間にアイデアが出てくるので、習慣になっているそうだが、一緒に寝ている者にとってはたまったものではない。
何か物音がするので目を覚ますと、暗闇にモニター光に浮かび上がる能面。ギャーと叫ぶわたしの声。
それでも構わずキーボードーの音を部屋に響き渡せている、その集中力の凄さ。

そんな面々でも唯一共通していたのは、K氏に対する尊敬と日本の中小企業を活性化する起爆剤となる、という熱い志だ。

どんなにK氏に不満を持っていても、仲間の意見が割れていても、最終的に鶴の一声で、御大がそうおっしゃるならと一つにまとまる。

しかし、それは皆がイエスマンというわけでは決してなかった。

そのK氏とそのミッションへの忠誠心の高さは、卒業式の時、血判状まで作ってK氏に贈ったことからも理解いただけるだろう。

2010年7月12日月曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<7>


●Xファイル

今だからこそ明かせるが、このパートナー養成講座には、絶対に他言しない、他者へは公開しないという、固い約束をさせられて、手渡された「Xファイル」なるものが存在した。

もう時効だと思うので、そのXファイルについてお話ししよう。

話は養成講座の第1回目の合宿の直前、10日前に遡る。

K氏から電話があった。

「Sさん、養成講座の受講者に手渡す教材ですが、一人300万円もの大金をもらうわけですから、それなりの教材を渡さなければならないと思うんです」

「ええ、ですから毎回6回にわたって、300ページほどのマニュアルを手渡せるように、今作成中ですが・・」

「いや、それだけじゃ足りないような気がするんです。一つアイデアがあるんですが、Sさん、明日こちらに来られませんか?」

「それは大丈夫ですが、何をするんですか?」

「それは来られてから話しましょう」


ということで急遽、九州から関東へ飛んだ。

K氏のアイデアとは、今までの電話コンサルティングのクライアント資料に優れたものが多数ある。広告やチラシやセールスレターである。
しかし、クライアントから公開許可を取っていない。また今から許可を取るにも時間がない。

それらの事例から100事例ほどピックアップし、なぜ優れているのか、なぜうまくいったのか、K氏流の特別解説をつけて、指導スキル向上にパートナーコンサルタントだけに公開しようというものだった。

まさに、非公開の極秘資料「Xファイル」であった。

ただし、時間がない。第1回目の合宿まで10日を切っており、印刷作業を含めると、2~3日で原稿を作成しないと間に合わなかった。

そこで、K氏がポイント解説を口頭で行い、それを私が書きとめ、その後、解説原稿に私がまとめるという作業を行うことになった。

100事例についてK氏の口頭解説に5時間、それを原稿にまとめるのに2日間の徹夜作業となった。

この作業は本当に大変だったが、非常に短期間にこれだけの事例の解説を書いて行くということは私自身、大きなトレーニングであり、ケーススタディとなった。

そして、当日手渡された参加者もこのXファイルに感動した。
当時日本でも、アメリカの人気TVドラマ「Xファイル」がブームになっていたため、そのイメージをダブらせ、ものすごい価値があるものに感じられたためだ。

K氏のこのネーミングとアイデアは大正解だったのである。
K氏の優れているところはまさにこの商品に対する価値づけだろう。

発売、発表ギリギリまで、商品の価値を上げることを考え続ける。
そして、クライアントの興味を引き、イメージしやすいネーミングを導き出す。

その後、一緒に仕事をやるようになり、彼の商品に対する考え方の基本がわかったのだ。

彼は常に、

「良い意味で顧客の期待を裏切り感動させるには・・」

「コンテンツの価値を顧客が考える10倍に高めるには・・・」

と考え続けているのである。

2010年7月9日金曜日

カリスマ・コンサルタントとゆかいな仲間たち<6>


●原動力その2

さて、この最終的に選ばれた9人だが、個性豊というか、個性の強い面々が揃った。

コンサルタントを生業としているのは1人。
後は建設業、税理士、IT関連などの事業を行っていた。
やはり、コンサルタント業界にどっぷりと浸かっているより、実業を経験しているということは大きな力だと思う。

実際に彼らはその後大きく実力を発揮していった。
彼らのユニークさはまた改めて詳しく紹介したい。


この養成講座のもう一つの大きな原動力は、
それぞれが自分の著書を出版したいと強く願ったことだ。

パートナーコンサルタント養成講座が始まって直ぐにK先生がぶち上げた。


「一人一人が著書を出し、メンバー全員で100万部を売ろう」

「その利益の一部でディズニーランドを貸し切って、親のいない子供たちを招待しよう」


自分の本を出版することによって、
このパートナーみんなのためになる。
K先生のためになる。
会員みんなのためになる。
そして、子供のためになる。


『すごいことだ!』


と思いつつ、最初は皆とまどった。動揺した。

なぜなら、当時は今と違って、まだまだ出版社業界は敷居が高く、誰でも著者になれるような、風潮ではなかったからだ。


『えっ、オレが著者になれるの?』


その当時誰もが半信半疑だった。

誰もがそう思いながらも、大きく夢が膨らんだ。


『著者になればどれだけ箔がつくだろうか』


とそれぞれが将来の自分の成功した姿をイメージした。

K氏が優れているのはここだ。
人々に将来ヴィジョンを描かせ、夢を持たせる、天性の才能があるのだ。